写真
「やっぱり早すぎるよなぁ……」
腕時計を確認しつつ、レオはひとりごちて足を止めた。足を止めたのは別に何か思うところがあったわけでもなく、単に目的地に到着したからだ。すっかり通い慣れたポップンカフェを前に、さてどうしたものか、としばし立ち竦む。
晴天の空に太陽が燦々と輝いている。その陽射しも、秋の訪れとともにだいぶ柔らかくなっていた。風は肌寒さを感じるようになっていたが、暖かな陽射しの下ならジャケットもコートも必要ない。せいぜい薄手の長袖を着ていれば充分、といった天気だった。
用がなくても出かけたくなるような陽気だったが、陽が高くなっていても昼と呼ぶにはまだ早い時間帯のせいだろう、ポップンカフェに見える客の数はずいぶんとまばらだった。いつもなら大勢の客で賑わっているカフェテラスも空席が目立ち、どこか、がらん、とした印象を受ける。
待ち合わせ時間にはだいぶ早いが、せっかくだから先に席を取っておこう、とカフェテラス内を見渡していたレオは、そこに予想外の人物の姿を認めて目を瞠った。
最初に気付いたのは、見慣れたベレー帽だった。おや、と思ってほんの少し視線をずらせば、それは確かにそれなりに長年の相棒と呼べる相手、スギだった。周囲に他の人影はなく、待ち合わせ場所にこんなに早く来ているなんて珍しいこともあるもんだ、と――自分のことは棚に置いて――その横顔に声を掛けようとして、
「……うわ、近付きたくない」
呼び掛けの代わりにレオの口から零れたのは、そんな呟きだった。
そんなレオにまったく気付いた様子もなく、スギは妙に締まりのない顔で手元を覗き込んでいる。
傍から見て、充分すぎるほどに不気味だ。
許されるなら決して近付きたくはないし声も掛けたくない。まかり間違っても知り合いと思われたくない、と思うのだが、待ち合わせ時間に合わせてやってくるだろう女の子たちの顔を思い浮かべると、わざわざ離れた席を取ることもし辛い。かと言って、いつまでも店の前で突っ立ていることもできず、
「――まあ、仕方がないか」
はあ、と深く吐いたため息と共に、逡巡する気持ちも無理矢理外に吐き出して、レオは諦観混じりの覚悟を決める。
――どうかせめて、店内に入って改めてカフェテラスに出て……そうしてスギに声を掛けるまでの間に、少しでも近付きやすくなっていますように。
そんな願いを胸に抱きつつ、店内へと足を踏み入れた。
――んで、まあ、そりゃあわかっていたさ。無駄な願いだなんて事は。
無常な現実を前に、思わずレオの眼差しが遠くなる。
遠目に見てもあからさまに不気味だった相棒の風体は、近付いてみればよりいっそう不気味なものだと思い知らされた。にまにまと崩れっぱなしの顔、時折痙攣したように震える肩――これで低く含み笑う声がオプションで付けば完璧だ、という不気味っぷりである。もっとも、なにがどう完璧なのかは言及したくもないが。
目の前に立っているレオにまったく気付いた様子もなく、相変わらず手元――近付いたことで、ようやくそれが写真だとわかった――ばかり見ているスギに、レオは困惑と嫌悪と殺意と、どれを真っ先に抱けば良いだろうかと半ば本気で悩んでいた。
このまま椅子に座ることなくいつまでも立ち呆けていては、他者からの認識において、レオも目前の不審者と同じレベルに堕ちてしまう。だからと言って、目の前の不気味な気配を振りまく人間と同席する、と言う状況は、いくらレオ自身が平静を装っていても、そんな人間と同席している時点で同類と思われる可能性は極めて高い。むしろそんなふたり組を見かけたのがレオだったならば、ほぼ間違いないなく、こんな不審者と平然と同席する奴は変人で間違いない、と断定するだろう。
レオは、さっと周囲に視線を走らせた。幸い、未だに人影はまばらで、スギの行動も注視しないと気付かない程度の挙動不審さ、ということもあり、スギもレオもほとんど注目されていない。現状においては、どちらかと言えば立ったままのレオの方が目立っている位だ。
つまり、今ならば。
――スギの奇行を止めて、ぼくがさっさと着席すれば何も問題ない。ノープロブレム……!
不名誉なレッテル回避のための解答を導き出した瞬間、レオの取るべき行動が決まった。
レオは、すう、と深く息を吸うと口を開きかけ――
――けど、もし呼び掛けてもスギの反応が無かったら?
ふ、と胸中に湧き上がる不安。しかも容易くその情景を思い浮かべることまでできてしまい、眉間に皺が寄る。
――それって、寂しいとか虚しいとかいうレベルの問題じゃない……! あんまりにもあんまりって言うか、そうだ、そもそも落ち着いてよくよく考えてみれば声を掛けるだけなんて、ぼくが受けた心労を思えばそんな穏便な方法じゃぼくの気が治まらない。
「……………………」
レオはいったん開いた口を閉ざすと、片手を静かに持ち上げた。
――てい。
完全な不意打ちにするために掛け声も胸中だけに収め、きちんと指を揃えた平手を立てると、切りつけるように垂直に振り下ろす。
振り下ろした先は、当然、今になっても気付かず写真に没頭している不審者だった。
――ゴッ!
間近にいないと聞き取れないような、鈍く、短い音が鳴った。
ほぼ同時に、その音の発生源と発生原因、双方ともが悶絶するように肩を震わせた。
「――っ、痛うぅぅ、一体何が…………て、レオ?」
頭頂部を押さえながら、突然頭上から襲い掛かってきた衝撃によって俯かせていた顔を上げたスギは、右手をさすりながら歯を食いしばっているレオの姿を見て、訝しげに眉を寄せる。
「いつからそこに……いや、ちょっと待て」
今もなお、じんじんと痛む頭と、そこを襲った衝撃。いつからかは知らないが、目の前にいるレオ。どこかにぶつけたのか痛そうにしている右手。それら断片的な情報を繋ぎ合わせ、現在のスギにとってもっとも重要度の高い問題に対する答えが導き出される――寸前、
「……忘れてたよ。人の頭って、固いんだよね」
「やっぱりお前か」
さらっと明かされた事実に、スギの顔が引き攣った。
「あのな、レオ? ぼくはいきなり言われなき暴力を振るわれる理由がさっぱりわからないんだが?」
「――ほんっと、性質悪いよね。本人に自覚がないって言うのは」
「…………は?」
「……………………まあ、いいけど」
冷やかに問い質すスギに、レオも負けじと冷たく言い返す。本気でわかっていないらしいスギが心底不審気に顔をしかめるのを見て、レオは、仕方がない、と言うように肩を竦めて見せた。
「無事、正気に戻ったんならいいさ。アー、済マナカッタネ、挨拶スルツモリガ、ウッカリ手ヲスベラセテシマッタヨ。ホントゴメン」
レオはスギの向かいの席に腰掛けながら、心ばかりの謝罪を口にする――平坦にも程がある、不自然に棒読みのセリフのどの辺に、僅かでも心が入っていたかはさて置いて。
「戻るも何もぼくはいつでも正気だけど。つーか、なんだその投げやりな謝罪は」
「ハッハッハ。ゴメンゴメン。悪気ハナインダ。気ニシナイデクレタマヘ」
「……え、何? ひょっとしなくても、ぼく、今まさに喧嘩売られてる?」
「気ノセイ、気ノセイ。そんなことはともかく――あ、すいません、ホットチョコレートとミックスサンドひとつ」
渦巻く殺気が見えそうな雰囲気に気圧されたのか、遠巻きに様子を窺っているウェイトレスに気付いたレオが朗らかに注文する。声を掛けられたウェイトレスは、急に電源でも入ったように背筋を伸ばすと、慌てた様子でお冷とおしぼりを運んできた。水の入ったコップとおしぼりをレオの前に置くと、半分ほど水の減ったスギのコップに水を注ぎ足す。レオの注文を復唱した後、スギには注文を聞く前に「ないよ」と言われ、「ごゆっくり」と一礼してから店内へと戻っていった。
間に入ったやりとりですっかり毒気を抜かれたスギは、先ほどのレオと同じように、しょうがいない、と言わんばかりに肩を竦めた。
「あんまりよくないけど、まあいいや。それにしても珍しいな、レオが待ち合わせ時間より早く来るなんて」
「さなえちゃんやリエちゃんに言われるならともかく、スギに言われる筋合いはないけどな。ぼくの場合、単に朝の打ち合わせが終わってから直行してきただけだよ。家に戻ってから来るとなると時間ぎりぎりになりそうだったし。だったら早めに来て時間潰してる方がいいだろ? 朝も抜かしたから、何かお腹に入れておきたかったし」
「何だ、考えることは同じか」
レオの言葉に苦笑するスギの前には、食後の名残を見せる一枚のプレート皿があった。氷しか残っていないグラスは、例の如くカフェオレでも頼んだのだろう。
「あれ? スギも徹夜明けになるような仕事あったっけ?」
「いーや。写真の現像のために朝食も食べずに家を出ただけさ。今は現像が終わるのを待ってる最中。ついでに席の確保も兼ねてるけどね」
たいてい一時間もあれば写真が出来上がるのは便利でいいよね、と笑うスギに、レオは首を傾げる。スギの手には写真の束が握られたままだった。
「待ってるって……その写真は?」
「ん? ああ、これは先に現像していた分。家に残ってた使い捨てカメラを全部使い切ったのは良かったんだけど、一個だけ現像しそびれていたことに、今朝気付いたんだ」
カバンの奥から出てきたときには焦ったよ、としみじみした口調で首を振るスギに、レオは今更のことを問いかける。
「……というか、その写真、何?」
「この間、リエちゃんとデートした時に撮りまくった写真」
事も無げに答えるスギに、レオは聞かなきゃ良かった、と心から後悔した。何が悲しくて朝から――そろそろ昼も近い時刻だが――他人の惚気話を聞かなければならないのだろうか。
「持ってくるなよ、そんなの……」
「そんなのって言うな。リエちゃんに写真を渡せるし、話題のネタになるし、一石二鳥だろう」
レオとしては他人の惚気話のネタなんぞいらん、と言いたい所だったが、リエはもとより、さなえも嬉々としてそのネタで盛り上がるだろう姿を想像し、
「……………………まあ、確かに」
がっくりと肩を落としたのだった。
レオの注文したホットチョコレートとミックスサンドがテーブルの上に並べられ、代わりに食事の終わったスギのプレート皿とグラスが片付けられる。レオが、さあ遅めの朝食だ、とサンドイッチに手を伸ばした時、不意にスギが席から立ち上がった。
「スギ?」
「そろそろ写真ができた頃だから行ってくる。席の確保、よろしく。あぁ、見たかったら写真見ていいから…………けど、汚すなよ?」
「おー……むぐ。りょーかい」
レオは、かぶりついたサンドイッチを飲み込みつつ、ぴっ、と親指を立てて返事を返す。ついでに、ひと言付け加えることも忘れない。
「……ばっくれるなよ。それって、食い逃げだから」
「するか!」
テラスから外に出るには、一度店内に入る必要がある。こめかみを引き攣らせつつ、スギは店内へと入っていった。スギはカウンターに立つ店員とひと言ふた言会話をしていたかと思うと、平然とした様子でポップンカフェを出て行った。足取りは常日頃と変わらないゆったりとしたもので、急いでいる様子は微塵も感じられない。レオが食事の手を止めて見送るまでもなく、スギの姿は建物の向こうに隠れてすぐに見えなくなった。
――……それにしても。
一応は、律儀に止めていた手と口を再び動かし始めながら、レオは不満げに口許を歪めた。
いくら本来の待ち合わせ時間まで余裕があるからと言って、そして目的が一致しているとは言え、人に留守番を言い捨てておきながら本人はのんびりとした歩調での行動。その態度はどうだろうか、とレオの目が半眼になる。
一瞬、スギ名義で追加注文でもしてやろうか、という考えが脳裏をよぎったが、
――最寄の写真屋って、どこだったっけ?
頭を捻り、最寄かどうかはともかく、少なくとも駅の近くに全国展開している店の店舗があったはず、と思い出す。
――そうすると、写真を受け取るのにちょっと手間取ったとしても往復二十分弱……ずいぶんゆっくり歩いてるから……それでも、三十分は越えないか?
しかし、その程度しか時間がないのでは証拠隠滅――本人不在の中での追加注文・配膳・完食・片付けまでの一連の流れ――が間に合わないかもしれない、と言う結論に達したため、せっかくの名案だったが泣く泣く却下することにした。
そんなことを考えている間も手と口は休むことなく動き続け、空腹だったこともあり、レオはものの十分程度でサンドイッチを完食していた。
「早食いは良くないってわかってるんだけどなー」
やや悔恨の残る表情で呟きながら、それでも満足そうに息を吐いて、食後のホットチョコレートを心ゆくまで堪能する。
そうして、目の前の皿もカップも綺麗に空っぽにしてから時計を確認してみれば、スギが戻ってくるだろう推定時刻まで、おおよそ十分前後の時間が残っている。
レオは、中途半端に余った時間をどうしようか、とぼうっとした視線を彷徨わせる。その視線が、引き寄せられるようにテーブルの上の束に向けられた。
「……写真かー」
見ても良い、とは言われているが。
「他人の惚気写真見てもなー……ん? いや、待て。発送の逆転だ。話題のネタになるなら今見なくても後々見せられることは間違いない――しかし今なら事細かに惚気話を聞かせてくる奴がいないから、むしろ純粋に写真だけを楽しむなら今こそがチャンス?」
気付いた事実に、はっとして目を瞠る。その瞬間レオは確かに、目からウロコが落ちる気分、というのを実感していた。
惚気話を聞かされるのも、惚気写真を見せられるのも、どちらも気疲れすることに変わりはないが、それがふたつ同時に襲ってきたら気疲れの度合いは倍どころの話ではない。多分、二乗分くらいの威力はある。
それなら片方だけでも先に済ませてしまう――つまり、写真だけ先に見ておく――方が少しでも耐性を付けられるのではないか。
もちろん、純粋に写真に対する好奇心もあることはあるのだが。
「……よし、それじゃあそういうことで。さっそく失礼して、と」
汚すな、と念を押されていたこともあり、おしぼりで充分に手を拭いてから写真の束を手に取った。
――言っとくけど、生半可な甘さは、ぼくにとってはないに等しいよ。
誰に宣言しているつもりなのか、甘さの定義が違うんじゃないか、とツッコミの入りそうな自負を胸にレオは不敵な笑みを浮かべた。その様はまるで、写真を見る、と言うより一騎打ちでも挑んでいるかのような風情だった。
「さーて、どんな写真を撮ってんのかなー、と」
そう口にするものの、どうせスギとリエがふたりで写っているものや、リエばかりが写っているものばかりなんだろうな、と言う予想と心構えをしながら一枚一枚写真をめくる。
「ほうほう、ほう…………ほー………………」
めくる手が進むに連れて、余裕のあった表情がどんどん強張っていく。
確かに、半分以上はある程度予想通りの写真だった。シャッターを押してもらえる通行人に恵まれなかったのか、それ以外の理由か、ふたりで写っている写真は予想以上に少なかったが、それを補って余る程度にはリエばかりが写された写真がたくさんあった。隠し撮り風味な写真も多く、見ているレオとしては、それってどうなんだ、と何度も頬を引き攣らされる破目にもなったが。
他によく見かけるのは、風景ばかりを撮っている写真だった。更に、やたらとピンボケした写真も何枚も出てくる。それは人――どうやらスギ――を写そうとして、撮影対象が動き回るせいで上手く撮れなかった写真らしい。もっとも、その両方の写真を合わせても、リエだけを写した写真の枚数には及びも付かないのだが。
そこから察するに、使い捨てカメラで撮影をしていたのはどうやらスギだけではなく、リエが撮影者側になることもあったようだ。
――しかしそれなら、素直に写真を撮られてもいいだろうに。スギの奴も大人気ない。
そう思うが、レオにはすでに写真に対するツッコミを入れる気力もなく、ただ淡々と機械的に写真をめくっていく。
その手の動きも徐々に緩やかになって行き――やがて、完全に手が止まった。
まだ目にしていない写真は、四分の一以上残っている。
それにも関わらず、どうしても、レオの手は動こうとしなかった。
そのまま時計の秒針が一周する間、レオは微動だにせずに居た。そのレオ背中が、唐突に、微かにではあったが震え出し――――次の瞬間、レオは、ぐわ、と顔を上げると写真から無理矢理視線を外す。
「――ッ、無理! 無理無理っ! 無理だから! 胸焼け通り越していっそチョコを吐く!」
とうとう耐え切れなくなったレオは、手にしていた写真の束をテーブルの上に置いた。半ば放るようなやや乱暴な手付きだったせいで、一番上の写真――つい先刻までレオが目にしていた一枚――が、ひらり、と微かな風に煽られ、舞い落ちた。
「――おぅぉっと!」
微妙な奇声を上げつつ、レオはひらりと舞う写真に慌てて手を伸ばす。けれどひらひらと舞う写真はレオの手をすり抜け、掠ることさえできなかった。更に二度三度、空っぽの手が宙をかいたが、四度目にしてようやく写真が床に落ちる前につかまえることができた。
落としかけた写真を何度もひっくり返しては、返す返す目を凝らして見つめ、傷や汚れが付いていないことをじっくりと確かめる。残っているのが指紋ぐらいのものであることを確認して、ようやくレオの肩から力が抜けた。
「……はあ。危ない、危ない」
更に、誰にも見られていないことを確認したレオは、深く安堵の息を吐いた。
故意ではないと言っても、もしこの写真を手荒に扱ったとスギに知られでもしたら――ぞっとしない未来予想に、レオの背筋に冷たい汗が伝い落ちる。
レオは手にした一枚を写真の束に戻そうとして、傷や汚れを確認するためではなく、そこに写されているものを見るために、改めて手元に視線を落とした。そうして、視界に飛び込んできたものに、自然と苦笑が零れる。
雲ひとつ見あたらない一面の青空を背景に、顔馴染みの少女が天真爛漫な笑顔を向けている。
ちらり、と一瞥しただけならそれは、ひとりの少女と青い空を写した、ただそれだけの写真でしかない。
しかしこの写真もまた、紛れもなく、甘いものに対する耐性なら並々ならぬ自負を誇るレオを容易くノックアウトした写真の中の一枚だった。
「ほんと、どれもこれもとんでもないよなぁ」
ほんの少しだけでも意識を向けて見てみれば、そこに写っているのはそれだけではない、と否が応にも気付かされる。
例えばそれは、少女がカメラマンに向けた想いであるとか。
あるいは、カメラマンが少女に向けている想いであったりとか。
シャッターが押された、その一瞬に込められた目一杯の想いが余りにも鮮明すぎて。
――楽しいね。
――嬉しいな。
――幸せだよ。
――大好き。
今にも、そんな言葉が聞こえてきそうだった。