後書き1

 というわけで、ICO長編小説、ひとまず完結と相成りました。
 拙さ全開のICO小説ではありますが、これが今の私が持っているICOの世界だと胸を張って言えます。
 これはそもそも、ICOをプレイして感じたこと、思ったこと、積み上げられていった自分なりのICO世界、そんなものをとにかく形にしたくて書き始めた、自己満足のために始めた小説でした。
 ICOというのがこれまた、基本、登場人物がほとんど会話をしないものですから、一番大事なICO世界の骨格は変わりようが無いけれどそれ以外のところが自分で補完し放題……むしろ、自分で補完していかないと空白がたくさんある小説みたいなものでして(笑)、ICOを好きになって同人誌を買い漁ってみたり、ICOサイトさんをぐるぐる回って色んな人のICO世界を目にしていたら、当たり前ですけど十人十色なICO世界があったのですね。特に考察系のサイトさんに辿り着いた日には、目からウロコが大量発生したものです。
 それで、これまたすごく当たり前なんですが、十人十色な人様のICOを見ていると、100%自分と同じICO世界というのはありませんでした。すごく感心したり、そうそうそんな感じと同意してみたり、あるいは私が自分で感じていた以上に素敵なICOの世界を形にしてらっしゃる方々はいましたが、それはやっぱり『自分と同じ世界』ではないのです。
 本当に当たり前なことに、自分のICOは自分の中にしかない。そうすると、頭の中に残すだけでは今なら憶えている思い出もいつか忘れてしまうかもしれないし、勝手に脳内変換してしまうかもしれない。(ちなみに人の記憶ほどアテにならないものはない、というのは小説書いてていやと言うほど思い知りましたよ……覚えているつもりで何度自滅したことか)
 ならば自分のICOは自分で形にしてしまえー、と小説と言う形で自分のICOを書き始めて早数年――ホームページ開いてからずっと連載していたわけだから……3年と9ヶ月?
 ……これ、当初は1年で完結する予定だったんですよね〜。(遠いあの日を振り返る眼差し)
 今思えば、何で1年で終わると思ったんだろうと不思議でなりません……ああいや、確かあの当時は1週間に1話あげてくつもりだったんだっけ?(おぼろげな記憶)
 まあ、何にしろひと段落付いたんだから無問題、無問題――嘘です、後半怠けてごめんなさい。

 読まれた方には「こんなICOもあるんだな」と思っていただければ幸いです。



 最終話『砂浜』についてちょっと補完。(自分でも忘れそうなので(笑))
 最後、どうやって終わらせようかなー、と考えてあのようになりました。
 『めでたしめでたし』も『どっとはらい』も付かない終わり方。我ながらちっとも綺麗に終わってません。(自分で言った)
 けれどずっとICO小説を書いている内に、書き始める前には気付かなかったことに思い至ったり、考え付いたりしてまして、その最たるものが『砂浜』ステージでした。
 最初、エンディング後のエピローグ的に思っていた『砂浜』ステージ。でも攻略本であえて『砂浜』ステージとして紹介されているのを見て、小説書きも終盤に差し掛かったある日、「わざわざステージ紹介されてるくらいだし、本当にエピローグでいいのかな?」と突如疑問に目覚めました。まあ、ぶっちゃけ単なる屁理屈ですが。(自分で(略))
 ――で、どんな屁理屈が完成したのかと言うと。



 霧のお城のお話は、角の生えたイケニエの少年と、女王の魂の器となる少女のお話でした。彼らのお話はエンディングで終わっています。霧のお城は海に呑まれ、器の少女は城に残り、イケニエの少年は舟に乗って外の世界へ。
 砂浜で目覚めた少年は、イケニエの証である角を失くしていました。イケニエとして捧げられるべき場所も無くしていました。だからもう、イケニエの少年ではありませんでした。
 砂浜に倒れていた少女は、けっして出ることができない、と言われていた城の外にいました。器として生まれ変わったはずの少女は器になる前の姿に戻り、魂を入れた器として収まるべき霧のお城も無くなっていました。それはつまり少女が器ではなくなったと言うことではないでしょうか。
 と言うことは。
 砂浜で目覚めた少年も、砂浜に倒れていた少女も、すでに終わってしまった『霧のお城の物語』の登場人物ではないのです。
 そこに居るのは、これから綴られていくべき白紙の物語の登場人物。
 ならば、『砂浜』ステージの物語はエピローグではなくてむしろプロローグ。

 よっし、それじゃあ綺麗に終わってなくてもどんな問題があろうか(反語)。
 綺麗な終わり方は他の人たちがいっぱいしてるしな!(清々しい笑顔)
(人はそれを開き直りと言います)



 ――そんなわけであのような終わり方になったのでした(笑)。
 そうそう。「ひとまず」とか後書きに「1」という表記がある点についても。
 このICO小説、基本的にイコ視点の三人称で書いている(つもり)なのですが、書き始めた当初からヨルダ視点バージョンと言うものも視野に入っていた時期もあったとかなかったとか。
 ヨルダ視点なんて、ホント捏造もいいとこなんで、書くだけなら人目につかないから問題ないけど、それをサイトにアップする勇気が湧くかどうかが不明なので、ある日突然“Y”という項目が付け加えられる日が来るかもしれないし来ないかもしれないし。(どっちか)

 まあ、つまり。
 今回の長編完結は限りなく未完に近い完結である、とうことなのでした。てへ。(笑ってごまかす)

2007年5月6日 玄米まなみ




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